2007年8月6日月曜日

マンションが暴力団の事務所に使われています

ちょっと勘弁してほしいですね。こんな悩みも、いつ自分のマンションに訪れるかはわかりません。知識として頭に入れておくとしましょう。

(Asahi.comより引用)


【質問】私のマンションの102号室にいつも数人の若い男の人が出入りしていて、何の人たちだろうといぶかしく思っていましたところ、昨日、突然銃が撃たれ、弾が102号室の窓を外れて玄関の壁に当たり、警察が来て大騒ぎとなりました。聞くところによると、102号室が暴力団の事務所として使用されていたとのことです。その後、102号室の人たちは自分の車を玄関の前において侵入して来る人をふさぐようにしているのです。私は当番で理事になっていますが、どのような方法がとれるのでしょうか。

【答え】前々回から「共同の利益の違反者」に対し、どのように対応するかを書いて来ました。区分所有法第57条では、義務違反行為の停止、除去、予防するための必要な措置をとることが出来ると定められていました(いわゆる差止請求)。

 区分所有法第58条は、義務違反行為が共同生活上の著しい障害となる場合は、その区分所有者に専有部分の使用の禁止を請求できる規定になっています(いわゆる使用禁止請求)。

 しかし、それよりもっと義務違反者の行為によって共同生活上の障害が著しい場合、『他の方法によっては、その障害を除去して共同部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき』、区分所有法第59条は、区分所有者全員または管理組合法人は、義務違反者の区分所有権(敷地利用権を含む)の競売を請求することが出来ると規定しています(いわゆる競売の請求)。

【質問】『共同生活の維持を図るのが困難であるとき』というのは、具体的にどんな場合をいうのでしょうか。

【答え】具体的に裁判で競売が認められた裁判事例として、次のような判決があります。

・暴力団組事務所として使用し、頻繁に外部の暴力団関係者が出入りし、他の暴力団組員との抗争がマンションで発生している場合札幌地裁昭61.2.8判決)

・同旨(名古屋地裁昭和62.7.27判決)

・同旨(京都地裁平4.10.22判決)

【質問】ところで、区分所有法第57、58、59条とありますが、いきなり59条の競売請求を求めるというのはいけないのでしょうか。順々に57条から裁判を起こしていかなければならないのでしょうか。

【答え】区分所有法第57条も58条も59条も、いずれも共同生活の義務違反者であって、その違反の悪質の度合いによって差止請求、使用禁止請求、競売請求と請求内容がエスカレートしています。どの請求が妥当かは、裁判例などを見て決めることになります。従って、57条から順々に請求しなければならないことではありません。

 いきなり59条の競売請求をしても良いのですが、もしその違反の度合いが59条には当たらないとして棄却されないために、例えば予備的請求として58条の使用禁止の請求を裁判提起のとき同時に議決して加えておいても良いと思われます。

【質問】それでは管理組合としてどのようにすべきでしょうか。

【答え】1、まず、理事会で義務違反者が区分所有している専有部分と、敷地共用持分を競売すべきかどうか決定し、これを管理組合の総会(臨時総会でも可)に議案の提起をするため議案書を作成し、総会の招集をします。

 2、しかし、決議の条件として区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決を必要とします(区分所有法第59条2項、58条2項準用)。

 3、以上の決議をするに当たって、義務違反者に対して「弁明の機会」を与えなければなりません(区分所有法第59条2項、58条3項準用)。

 4、この請求は裁判で行うことになりますので、原告となる人を決めなければなりません。例えば管理者(管理組合の理事長)またはAさんという区分所有者を指定することが必要です(区分所有法第57条3項準用)。

【質問】よく分かりました。そして判決が勝訴したらどのようにするのですか。

【答え】判決にもとづいて裁判所に競売を申し立て、裁判所の不動産競売係が競売を行い、売れた金額は競売費用を除いて残りは義務違反者に渡されますが、義務違反者はこのマンションの所有権を否定されますので、出て行くことになります。

 ただ、裁判中に義務違反者が第三者のこのマンションの区分所有権を売ってしまった場合は、裁判は第三者には及びませんので、取り下げないと却下となります。また、競売請求の裁判が認められ勝訴し、判決が確定したら、6カ月以内に競売の申し立てをしないと競売請求はできなくなりますのでご注意下さい(区分所有法第59条3項)。

【質問】その義務違反者が競売された102号室を自分で競落すれば、また戻ってこられるのではないですか。

【答え】それは出来ないこととなっています。義務違反者はもちろんのこと、名前は別人でも実際は義務違反者の金で競落することは禁止されています(区分所有法第59条4項)。